雨量が少なく乾燥した英国エセックス州にあって 冬には−6℃、夏には30℃を超える苛酷な気象条件と　 石ころだらけの不毛地帯、一転して部分的にはぬかるんだ湿地帯という 農地としては見向きもされなかったこの土地。 1960年から　アンドリュー＆ベス・チャトー夫妻がコツコツと 植物への深い造詣と研究心、そして情熱をもって 深みのある美しさで満たされた庭に生まれ変わらせてきました。 アンドリューさん他界後の今、ベスさんも80代後半になられていますが 今も高い志で維持管理・発展し続けているのはさすが！ その膨大な知識・データ・経験を　庭を愛するすべての人々に 惜しみなく分け与えてくれるこのガーデンは、 “ガーデナーの聖地”と言っても過言ではないでしょう。

ベス・チャトー・ガーデン Beth Chatto Garden

Elmstead Market, Colchester, Essex. CO7 7DB. Tel: 01206 822007 　（カフェやナーサリーも充実しています。　 　　苗を買って帰れないのが、かえすがえすも残念。 ）

年間を通じてほぼ毎日 オープンしていることを伝えるガーデンの看板。 ベストシーズンしか見せてもらえないことが多い 英国の庭のなかでは　かなり珍しい存在です。

元は駐車場だったという痩せた土地を　 見事に生まれ変わらせた「グラヴェル・ガーデン」。 乾いた環境に耐える植物を選んで植栽した、実験的な庭です。 人は一切の水やりをせず、自然の雨水だけで植物自身がやりくりしているという画期的なもの。

グラヴェル・ガーデンの趣旨と指針が記されたボード。 苛酷な環境の中、「水やりなし」で どの植物が生き残っていくかを 一般のすべてのガーデナーに 学んでもらうための実験の場なのです。

乾燥に耐えうる植物だけで構成されたとは思えない 多彩な美しさを見せる植栽。 それぞれの花色・葉色が引き立てあっている様子が見事です。

プライベートエリアの脇にある「スクリー・ガーデン」（小石の庭）。 ここでは　乾燥に強いセダム類を集めています。

プライベート・ガーデン越しにウォーターガーデンを望む景色。　 家やフェンスなどの構造物や アクセントとなるオブジェ的な壺があることで 余計に全体の雄大な景色が強調されるとともに 景色に緩急がついて、見やすいものになっています。

水辺を彩るアイリスやクリンソウ。 澄み渡った空気の中で　息を呑むほど鮮やかな発色に見えます。

水はけが悪くぬかるんで荒れていた窪地を 苦労の末　このウォーター・ガーデンに仕立てていかれたようですが、 今は　空や大木が映り込む静かな水面のきらめきが とてもピースフルな気持ちにさせてくれるばかりで 元のありようがまるで想像できません・・・

池や水路の傍らには 大ぶりの葉のアーキテクチュラル・プランツが 効果的に配されています。 しかし　ただそれだけではなく 繊細な草花もふんだんに添えられているので 見どころの連続につぐ連続・・・！

ハッとするような明るい色彩が 水との対比で　あざやかに目に飛び込んできます。

はたらくひとたち・その２。 終りかけたクリスマスローズの花茎を切り取って 株の充実に備えています。 ここの植栽には、細かい部分にまで　 適切な時期に打つべき手が入っているので あるべき姿に育っていくという、至極当然な理を感じます。 ・・・とサラッと言いますが、実はこれはすごいことなんです。

はたらくひとたち・その１。 広大な芝生の手入れには　このカートが欠かせません。 　 白樺の大木があるこの一角の右手には アンドリューさんの銘を刻んだベンチがあるのですが、 きっとそこから全体を見渡す眺めが 氏の一番のお気に入りだったのではないかと 勝手に想像しています。